
世界と勝負するために。そして人々の暮らしをもっと豊かにしていくために。
日々、挑戦を続けている宮崎工場と宮城工場の特徴的な技術の一部を紹介します。
宮崎工場および宮崎第二工場で最も力を注いでいる製品が、パワー半導体。
なかでもSiCを使用した次世代パワー半導体の量産化技術は、世界でもトップクラスです。
スマホや腕時計、電卓などで活躍するローパワー半導体に対し、大きな電流・高い電圧でモーターなどを動かすために設計されるのが、パワー半導体です。例えば、自動車の駆動回路、鉄道用のインバーター、太陽光発電施設の電力変換回路などで活躍しています。なかでも、脱炭素化に向けた動きが世界的に進む中で、自動車業界ではEV化が加速中。EVの電力コントロールに欠かせないパワー半導体の需要が近年、急拡大しています。
なかでも注目を集めているのが、シリコンと炭素の化合物・SiC(シリコンカーバイド)を使ったパワー半導体です。 SiCは、従来のSi(シリコン)よりも、オン抵抗が低いため、電力の損失を抑えることが可能。 さらに高温、高周波、高電圧といった過酷な環境下でも高速動作などの優れた機能を発揮します。 そのため世界中で需要が拡大しており、その市場規模は、2023年のデータで約18億ドルに到達。その後もSiCの市場は成長を続けています。
当社のSiCデバイスは、品質の高さも兼ね備えています。 宮崎工場で生産しているロームの第4世代のSiC MOSFETは、世界でもトップクラスの低オン抵抗を実現しています。 またパワー半導体はウエハを薄く加工することで性能が向上します。 通常のウエハは300~600マイクロメートル程度の厚さですが、宮崎工場では最も薄いもので、Siでは60マイクロメートル、SiCでは150マイクロメートルまで加工する技術を有しています。
SiCウエハは基板の欠陥がSiウエハよりも多く、品質の安定化が困難といわれています。 また当社が担っているウエハプロセスの工程においても、SiC独自の加工技術や、専用の設備が必要となります。 そうしたハードルがいくつもあるなか、Siのウエハプロセスで培ってきた当社の技術と、ロームのSiC技術を組み合わせることで、量産化を実現してきました。
SiCデバイスの量産化に初めて成功したのはロームグループの他拠点でしたが、その時のウエハサイズは4インチでした。 その後、宮崎工場では6インチのインチアップに成功。 増産と次世代のSiCパワーデバイスの量産化に取り組んできました。 そして現在計画中の宮崎第二工場では、8インチへのインチアップに挑戦。と同時に、SiCの生産能力を2021年比で35倍まで拡大していく予定であり、計画が実現すれば、SiCデバイスでは世界一の生産能力を誇る工場となります。
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SOS技術とは、サファイア基板上に薄膜シリコン層を形成(Silicon On Sapphire)することで、その特徴を活かした高周波ICなどを製造する技術のことです。高周波ICとは、周波数300MHz~30GHz帯域の電波をカバーできるアンテナスイッチ素子(部品)のことをいいます。
スイッチに要求される性能には、①低損失挿入であること②スイッチング速度が速いこと③高アイソレーションであることなどがあり、こうした性能が従来のシリコンデバイスよりも高く、また低消費電力の面でも優れた製品を作ることができます。製品の用途としては、ネットワーク通信(5G他)基地局や、高周波製品(スマートフォン、タブレット端末)向け計測器などに利用されています。
MEMS (Micro Electro Mechanical System)技術とは、半導体製造技術を応用して半導体のシリコン基板上に機械的に可動する機能を持たせた部品を作り込む技術のことです。宮崎工場では他社に真似できない高性能な圧電体膜を使用して、プリンタのインクを吐出するヘッド、スマホや自動車に搭載されるセンサ、イヤホン搭載のスピーカーなどに向けたデバイスを生産しています。
宮城工場では多種多様なLSIの製造技術に挑戦してきました。
そのノウハウを活かした製品は身近な家電から宇宙開発までさまざまな用途で活躍しています。
低消費電力を特徴とした特定用途向けマイクロコントローラを生産しています。業界トップクラスの超ローパワーアナログ技術と、繰り返し動作に最適な独自シーケンサを搭載。高品質な音声再生技術を強みとしています。その他、高ノイズ耐性を持ったセキュリティマイコン、家電や住宅設備向けの周辺機器を内蔵した音声再生マイコンも生産しています。
沖電気工業の時代から長年培ってきた高周波回路技術とデジアナ混載技術を活用し、NFC+ワイヤレス給電、UHF帯RFID、LPWA無線、Sub-GHz無線を実現するLSIを生産しています。用途は、小型機器へのワイヤレス給電や、低消費電力を活かした電池レスの在庫量、温度や湿度といったセンシング。さらには、Wide Area通信性能を活かした物流IoTやインフラモニタリングなどへと広がりを見せています。
画像処理、フレームメモリを1チップに最適化した統合コックピット向け画像LSIを生産しています。 その特徴は、カメラの高速表示および安定表示に対応する画像処理技術と、フレームメモリを内蔵した画面合成、映像補正技術、高速インターフェイスに対応していること。 主な用途としては、自動車に搭載する電子ミラー、HUD(Head up Display)、多様な情報を表示するクラスタパネルなどがあり、車内のインフォテインメントの充実と安全性の向上に貢献しています。
また、高負荷でも高速駆動可能な画素充電補償技術を備えた表示用ドライバも生産しています。高フレームレートにも対応しており、高速な応答性能が要求されるゲーミングモニターに採用されています。その他、高い安全機能が求められる車載用ディスプレイに搭載される表示用ドライバも生産しています。
宮城工場は大学の研究機関とも協力し、日本の競争力向上や宇宙開発に向けた共同開発にも積極的に取り組んでいます。東北大学とは、仙台市にある高輝度放射光施設ナノテラス向けに、広ダイナミックレンジの軟X線センサを共同開発中。
また京都大学とは、2032年打ち上げ予定のX線天文衛星用に高抵抗FZ基板のSOIウエハを用いた高感度X線センサを共同開発中。完成すればブラックホールの探索など、さまざまな宇宙研究、宇宙開発に用いられる予定です。同様に産学連携で開発された、特殊プロセスSOIを使用したマイクロプロセッサは、宇宙環境下でのノイズ耐性に強いという特長を認めていただき、JAXA製人工衛星に100%搭載されています。また、X線、紫外線から赤外線まで幅広い波長に対応したセンサを開発し、大学や研究機関に提供しています。