要旨

ラピスセミコンダクタは、SigfoxおよびIEEE802.15.4k∗1 / IEEE802.15.4g∗2の複数無線通信規格に対応する無線通信LSI「ML7404」を用い、Sigfoxのサービスエリアの拡張を実現する、業界初の「LPWA ブリッジ通信用ソフトウェア」を開発しました。
Sigfoxは、IoTネットワークで用いられる低電力広域通信 (以下、LPWA∗3) の代表格です。基地局の設置が不要で他の方式と比べ、端末コストがリーズナブルなことから導入しやすいサービスとして、すでに60の国と地域 (2019年1月1日時点) で採用され、日本国内では主要都市でのエリア展開が順調に進んでいます。しかし、農地や山岳地帯などはSigfoxのサービスエリア外であることも多く、LPWAネットワークの特長を活かしたIoTシステムの導入には、こうしたエリア外での通信を補完する方法が必要な状況でした。
こうした中、今回ラピスセミコンダクタが提供を開始する「LPWAブリッジ通信用ソフトウェア」は、複数の無線通信規格対応のML7404が搭載されたIoT端末やリピータ (中継機) 端末に組み込むことで、IEEE802.15.4kとSigfoxの二つを使ったLPWA間のブリッジ通信を実現し、これまで課題だったSigfoxサービスエリア外からの通信を可能にします。これにより、従来のLPWAだけでは難しかった広範囲・高信頼のIoTシステムを構築できるようになります。
なお、本ソフトウェアは、1月よりホームページ内のサポートサイトにて提供を開始します。
今後もラピスセミコンダクタは、複数無線通信規格に対応した「ML7404」をベースに、今回新たに提供を開始する「ブリッジ通信」や、メンテナンス負荷の軽減を目的とした遠隔で端末のファームウエアが更新できる「FOTA∗4」など、容易にLPWA通信を実現するためのソフトウェアを順次提供してまいります。

ブリッジ通信用ソフトウェア搭載端末ならSigfoxサービスエリア外でも、IEEE802.15.4kを使いSigfox網へ 「ブリッジ通信」可能!

用語説明
  • ∗1 : IEEE802.15.4k
    標準化を主な活動としているThe Institute of Electrical and Electronics Engineers, Inc. (IEEE) が定める長距離無線規格の一つ。元々は、インテリジェントで電力効率の高い送受電網であるSmart Gridでの活用を主目的に規定されたもので、直接拡散方式による受信感度向上により、長距離通信を図ることを特徴とする。
  • ∗2 : IEEE802.15.4g
    IEEEがSmart Utility Networkを主用途に想定し規格化する無線通信方式の一つ。日本では電力スマートメータの家庭内利活用を目的としたBルートやHAN (Home Area Network) としてWi-SUNの物理層として採用されている。LPWAの一方式と分類されることもあるが、一般にLPWAが見通し10km以上の伝送を目指しているのに対し、IEEE802.15.4gによる方式では1km以下の伝送距離を想定することが多く、近距離無線方式の一種と分類されることが多い。
  • ∗3 : LPWA (Low Power Wide Area)
    無線通信規格の一種で、「低電力広域 (無線) 通信」のこと。「LPWAN (Network)」と称されることもある。
  • ∗4 : FOTA
    Firmware update Over-The-Airの略。機器に触れることなく無線通信を活用しファームウエアを書き換える技術、方式のこと。FUOTAや単にOTAと称されることも。下り通信の速度・容量に制約のあるSigfoxでは、実質的に実現不能。ML7404では高速のIEEE802.15.4g (~100kbps)を用いてSigfox端末のFOTAを実現。

背景

日本でのSigfoxサービスは、京セラコミュニケーションシステム社をオペレータとし、2017年2月のサービス開始以降、主要都市へのエリア展開がほぼ完了しており、人口カバー率は90% (2018年12月3日時点) を超えています。
一方で、LPWA端末は、自身がサービスを運営したいエリアにSigfox基地局が敷設されていないケースのほか、端末設置当初は問題なくSigfox基地局と通信できていたものの、その後、高層マンションの建設などで、不感帯となってしまい通信不能になることも予想されます。
このような場合、オペレータが新しく基地局を敷設するのを待つか、インターネット接続を別途確保の上で、自身でレンタル基地局を設置する必要があり、サービス開始 (再開) させるまでの期間やコストが膨らんでしまうことから、Sigfoxの特長を活かすための手法が求められてきました。

Sigfox Japan株式会社 カントリー・マネージャ 吉澤 徳明 様
「これまで、Sigfoxと他の無線技術を組み合わせたソリューションがパートナー各社様から提案され、多くのお客様に採用いただいております。
これらは各無線方式を同時に動作させることが可能な作りとなっていますが、今回新たにラピスセミコンダクタ殿が開発されたソリューションは、複数の無線方式をサポートしながらも、トランシーバは一つ。加えて、抵抗、コンデンサなどの受動部品を共有化し、コストを抑えることを可能にしたという点でユニークと言えるでしょう。Sigfox社といたしましては、パートナー各社様がより一層バラエティ豊かなソリューションをご提案され、多くのサービス利用者の皆様に幅広い選択肢を提供いただけますよう、その活動を支援させていただきたいと考えております。」

京セラコミュニケーションシステム株式会社 (KCCS)

取締役 LPWAソリューション事業部 事業部長 松木 憲一 様
「Sigfoxサービスは、サービス開始以来、約一年で100万回線数を超える契約をいただき、順調なスタートを切ることができました。全世界に跨るパートナー様の様々なソリューションを活用できることはSigfoxの大きな特色の一つですが、一方、日本市場において、より広範なお客様にその利便性を享受いただくためには、半導体・センサ・モジュール・エンドデバイスなどのベンダや、SIerといった開発に係わる全ステークホルダを日本国内で完結させるエコシステムの醸成も重要だと考えています。
そうした環境下、前身の企業所属時代を含めると五十余年にわたり、日本の通信事業を半導体ベンダの立場で支えてきたラピスセミコンダクタ殿がSigfox認証を取得し、日本語で全ての設計データを提供するとともに、特殊な無線技術に関するコンサルテーションを日本語で提供されることは、事業者を選ばずサービス開発期間の短縮に寄与するものであり、当社にとっても、日本のSigfoxサービスの一層の普及にとっても、喜ばしいことと捉えています。」

ラピスセミコンダクタ株式会社 LSI & Solution Company

ローパワーLSIビジネスユニットビジネスユニット長 石村 民弘
「注目されるIoT市場に対し、LPWAの無線方式による課題を解決するLSI ML7404を既に2017年10月より出荷しています。
このたび、LSIだけでなく、電波法認証済のモジュールの設計データ (回路図、BOMリスト、レイアウトデータ) 、搭載するファームウエアのソースコード、複数の無線方式を実現するアプリケーションのソースコードなどの準備が整いました。これにより、LPWAの通信システムを検討している、幅広いお客様の設計期間短縮や技術難易度の引き下げに貢献できると考えています。」

特長

ML7404の特長
ML7404は、Sigfoxに加え、LPWA方式の一種であり、長距離伝送のみならず、同一システムの妨害波耐性が高く、反射波が多い市街地での適性を持つIEEE802.15.4k、さらに、1km以下と伝送距離は短いものの、LPWAよりデータ速度の速い近距離無線方式の一種であるIEEE802.15.4gの三つの無線方式への対応を実現した無線通信LSIです。

WQFN 32pin

ML7404リファレンス・デザイン
ラピスセミコンダクタは、お客様の設計期間短縮に寄与するリファレンス・デザインを開発し、無線モジュールの設計データ一式 (回路図、部品表、レイアウトデータ) を提供します。このリファレンス・デザインは、Sigfox対応無線通信LSI、及び、無線モジュール用として、Sigfox社が定める「Sigfox Verified Certificate (日本向け) 」を日本の半導体メーカーとして初めて取得。さらに、日本の電波法令に適合していることを証明する「工事設計認証」も取得済みです

ML7404リファレンス・デザイン Sigfox認証取得済 工事設計認証取得済 設計データをご提供

その他、開発サポート
「LPWA ブリッジ通信用ソフトウェア」をはじめ、リファレンス・デザインとしての回路図、部品表、基板配線レイアウトの各種設計データ、ドキュメントのすべては、同社のホームページのサポートサイトにて1月から無償でダウンロードすることができます。

ラピスセミコンダクタ サポートサイト ∗サポートサイトご利用には、アカウントの登録が必要です。

ラピスセミコンダクタ サポートサイト