業界初!リアルタイム土壌環境モニタリング、土壌センサユニット「MJ1011」
業界初!※ リアルタイムでpHなど土壌環境モニタリング可能な
土壌センサユニット「MJ1011」を開発
~ 土壌環境モニタリングで農業の見える化を実現、スマート農業に最適 ~
※ : 2017年11月ラピスセミコンダクタ調べ
要 旨

ラピスセミコンダクタは、農業法人や農業分野のICTサービスベンダ向けに、土壌センサと低消費電力マイコンの技術を活かした土壌センサユニット「MJ1011」を開発しました。これにより農業 圃場注1 (ほ じょう) 管理において重要な土壌環境情報の見える化が可能になります。
土壌センサユニット「MJ1011」は、直接土の中に埋め込むことで、EC (電気伝導度)、pH (酸性度)、地中温度、含水率などの土壌環境指標を同時にリアルタイムで測定することが可能です。半導体方式の土壌センサやAFE (アナログフロントエンド) チップ、16bit ローパワーマイコン ML620Q504Hなどラピスセミコンダクタオリジナルのチップセットを搭載。低消費電力と小型化を実現し、ソーラーパネルを使ったシステムにも有効です。
定量的にデータを蓄積することで、栽培や管理へのフィードバックができるため、経年データの比較や将来予測などによる生産性向上および品質管理への貢献や、スーパーなど販売店への安定した出荷などへの効果も期待されます。
本製品は、2018年1月末よりサンプル出荷を開始し、2018年4月末より量産出荷開始を予定しています。
ラピスセミコンダクタは、センサ技術、低消費電力技術などの強みを活かし、農業・社会インフラ・工場・物流等のIoTソリューションビジネスの加速展開を図り、社会に貢献してまいります。
【用語解説】
- 注1 : 圃場
- 農作物を育てる田畑、農園のこと。
背 景

近年農業分野では「6次産業化」が注目を集め、圃場へもICTの導入が行われてきています。栽培や加工・流通情報などのデジタルデータ化や管理が進められる中、栽培工程は天候などの状況に左右されやすく、管理のボトルネックとなっていました。栽培工程の見える化のため、圃場環境情報をリアルタイムでモニタリングしたいというニーズに対して、従来は土壌の採取後に評価施設で分析する必要があり、数メートルで大きく変化する土壌環境のリアルタイム計測や広範囲の土壌情報を同時に取得することは困難でした。
このような中、ラピスセミコンダクタは半導体技術をベースにした土壌センサを開発。得意とする無線通信や低消費電力マイコン技術などと組み合わせ、農業IoTソリューション分野での実証実験を行ってきました。そして今回、実証実験結果などを踏まえ、土壌センサユニットMJ1011を開発し、商品化しました。
土壌センサユニット「MJ1011」の特長
MJ1011は、スマート農業に最適な下記の特長を実現しています。
1. 土壌環境指標4項目 (EC、pH、地中温度、含水率) を同時に計測可能、通信システムとの接続により、リアルタイム計測を実現
- pH測定には ISFET注2 方式を採用。土壌や水中など測定対象に埋設し、先端に配置したセンサ部で地中や水中のEC (電気伝導度)、pH (酸性度)、地中温度、含水率といった環境情報の計測が可能です。従来の技術では土壌環境指標4項目を同時に計測する製品はなく、ラピスセミコンダクタの半導体をベースにした集積化技術により可能になりました。
また、これまで土壌環境指標は対象土壌を採取した後に実験室などで測定していましたが、本製品と通信システムを併用することでリアルタイムでの測定も可能になります。
2. 業界トップクラスの制御技術により超低消費電力を実現、太陽電池での長時間駆動も可能に
- 計測したデータは、専用に開発したアナログフロントエンドLSIと、業界トップクラスの低消費電力を実現した16bitローパワーマイコンML620Q504Hで処理。消費電流は計測時20mA、待機時27µAと低消費電力化を実現しました。太陽電池での動作が可能なため、圃場などでの電源供給の課題が解決され、土壌モニタリングの実現性を高めます。
3. どこでも使用できる小型・防水モジュール
- 専用のアナログフロントエンドLSIによって部品点数を削減し、サイズは122 × 42 × 42mmと小型化を実現。先端部の土壌センサ実装部分 (センサヘッド) はワンタッチの交換式で、別売りのセンサヘッドと交換できます。
また、IP67注3 の環境耐性防水規格に対応。土壌、水耕、養液栽培などの各種栽培方式にも使用可能で、各種施設栽培、露地、植物工場などの様々な環境での使用が可能です。
4. 汎用I/Fにより、既存のIoTシステムにもかんたん接続
- デジタルインターフェースUARTを搭載。汎用コネクタ[ヒロセ電機 HR30-6PA-6S (71) ]を採用し、接続仕様を合わせることで、各種データロガー等、既存のIoTシステムへの導入も可能です。また接続可能なIoTシステムのご紹介もいたします。
【用語解説】
- 注2 : ISFET
- Ion Sensitive Field Effect Transistor (イオン感応性電界効果トランジスタ)。イオン感応膜を有するFETで、イオン活量によって発生する、測定サンプルとイオン感応膜の表面電位を検出する。シリコン半導体製造技術により作製できる。
- 注3: IP67
- 機器の保護構造についての防塵・防水性を等級に分類し、そのテスト方法を規定している国際規格に基づく表示。IP67は、完全な防塵構造で一定の圧力、時間で水中に没しても水の侵入しない構造を示す。
IoT土壌環境モニタリング、実証実験を実施
ラピスセミコンダクタは農業法人などと連携し、土壌センサを埋設し圃場の土壌環境をモニタリングする実証試験を行なってきました。土壌センサをエンドポイントと呼ばれる無線通信機に接続し、複数個所に設置。計測データをコンセントレータ (中継器) 経由で、ゲートウエイまで送信します。これをCloudサーバ経由で見える化することにより、環境モニタリングと圃場管理を行ないました。
本実験に使用したエンドポイント、コンセントレータには、当社の920MHz帯域 無線通信LSI (ML7345 ) と業界トップクラスの低消費電力を実現した16bit ローパワーマイコン (ML620Q504H ) を使用しました。
920MHz帯域の無線通信の採用で、見通しが良ければ500m程度※の無線通信が可能なため、複数の圃場をカバーすることを確認しました。
また、圃場や山間地でのIoT化には電源確保の課題があり、実用化の障害になっていました。本実験では当社の16bit ローパワーマイコン (ML620Q504H ) などによる低消費電力技術を活かし、太陽電池での駆動が可能であることを確認。様々な設置条件での土壌モニタリングの可能性を示唆しました。
取得した環境データは手元のスマートフォンやタブレット、パソコンなどで確認することができます。これらのデータを蓄積することで、定量的に栽培や管理へのフィードバックが可能となり、肥料や水分、地温の管理、土壌改良、経年データの比較や将来予測など、生産性向上に貢献することが期待されます。
※ : ラピスセミコンダクタ評価による。
実証実験での感想
株式会社 ジェイエイフーズ みやざき (宮崎県 西都市) 代表取締役専務 内野宮 由康様
- 従来の野菜栽培は、感覚値や勘、経験と、細やかな感性によって行われてきました。最近では経験豊富な営農指導員も少なくなり、また気象変動も大きくなってきている状況ではセンサによる細かなデータをリアルタイム取得し、それにより勘と経験を補完することで、良質・低コストで安定した野菜生産を実現していくことが急務です。今回ラピスセミコンダクタが開発したこの土壌センサは、野菜栽培の基本である「土壌」の状態 (pH値、EC、地温など) をモニタリングでき、環境変化に応じた最適な施肥等栽培管理が実現可能になります。「勘や経験による野菜栽培」から脱却し、データに基づき生産工程管理 (GAP) ができる「科学的農業 (IoT)」をジェイエイフーズみやざきはラピスセミコンダクタと目指します。
JA あさひな (宮城県 黒川郡) 園芸特産課長 藤原 浩記様
- ラピスセミコンダクタとJAあさひなは本年5月から土壌内環境を測定する土壌センサの実証実験を開始しました。ラピスセミコンダクタが開発した土壌センサを土中に埋め込み、圃場内土壌のpHやEC、温度などを定期的に測定し数値化、無線通信によりパソコンや携帯端末を介してリアルタイムに情報を確認することができ土壌環境変化に応じた適切な肥培管理が可能となりました。この土壌センサを製造するラピスセミコンダクタ宮城が当JA管内にあることからプロジェクトが進行し、管内の水田や野菜圃場の計4ヶ所に設置しデータの集積を行いました。今後は土壌センサを実際の現場で活用することにより、作業の効率化や生産性の向上などの多くの効果が期待されます。
仕様
機 能 |
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性 能 |
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消費電力 | 計測時 : 20mA、待機時 : 27µA (ラピスオリジナルローパワーマイコン採用) |
I / F | UARTデジタルインターフェース対応 |
コネクタ |
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サイズ | 122 × 42 × 42mm、ケーブル2m (延長ケーブル3m) |
防 水 | IP67対応 |
保 証 | 1年間の製品保証。先端のセンサヘッドは脱着式で交換可能。 |
販売計画・応用分野
- 商品名 : MJ1011
- サンプル出荷時期 : 2018年1月末から 初回生産数量 : 1,000台
- サンプル価格 (参考) : 価格については こちらから お問い合わせください。(2018年2月1日 価格情報訂正)
- 量産出荷 (予定) : 2018年 4月下旬から 生産数量 月産500台 (当面)
- 応用分野 : スマート農業、水質モニタリング、社会インフラ等
関連プレスリリース
- 世界初 土壌環境のリアルタイムモニタリングが可能な土壌センサを開発
- 農業の生産性向上や防災対策などの社会インフラソリューションへ貢献(2015年 10月2日)
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