国内スマートグリッド向け

スマートメータ向け無線LSI
開発プロジェクト

国内市場で本格的にスマートグリッドが立ち上がった2010年、スマートメータに搭載する無線通信LSIの開発を開始しました。技術面、電波法標準規格への対応、競合とのコンペ、開発途中での国内標準規格変更など開発は困難を極めました。

PROJECT MEMBER

通信MCU開発チーム

無線通信LSI開発エンジニア

1993年入社

大手電力会社がターゲット
新しい周波数帯域の無線通信に挑戦

開発の経緯

スマートメータはすでに設置が進んでいるので、一般的にも知られるようになってきたと思います。スマートメータは、「毎月の検針業務の自動化やHEMS(Home Energy Management System:住宅用エネルギー管理システム)等を通じた電気使用状況の見える化を可能にする次世代電力量計」という紹介が、電力会社からなされています。ラピスセミコンダクタに引き合いが来たのは、スマートメータが既存メータにはない無線通信機能を搭載する必要があるためでした。
日本国内市場で本格的にスマートグリッドが立上りつつあった当時、地上デジタルテレビ放送への移行によるアナログ放送停止で、UHF帯の再編が行われスマートグリッド向けに950MHzが割り当てられARIB STD-T96(IEEE802.15.4d/g)と言う規格が制定されました。その時、システム開発の大手メーカから無線LSIの引き合いをいただき国内ライフラインの構築に貢献すべく開発に着手しました


大規模で複雑、競争の激しい市場

電力関連の開発は、電力会社・インフラ・ライフライン、そして国や自治体、法律までが関係する大規模で複雑、かつ競争の激しい市場です。それが今回のプロジェクトの最大の課題であったと言ってもいいかも知れません。無線をスマートメータに搭載するという新しいアプリケーションで、当然ながら競合他社がいます。 そこで成功する、つまり採用いただくためには、商品力に加えて技術サポートや拡販活動に戦略的アプローチが必要でした。


お客様へのアプローチ

国内でスマートメータ開発に先行する最大手の電力会社へ参入することを目標にしました。そのためには、その電力会社をターゲットとしている大手無線モジュールベンダーに採用してもらうことがポイントになります。ライフライン市場は安定供給と、きめ細やかな技術サポートが必須のため、ラピスセミコンダクタが日本の半導体メーカーであることを強みとして拡販活動を行う方針としました。技術的観点では、950MHz帯の無線は新規分野となりますが、ラピスセミコンダクタは特定小電力無線、2.4GHz無線の技術と多くの実績があり、優れた無線通信のベース技術を持っていることをお客様に丁寧に説明して、安心して採用いただける土壌を作っていくアプローチを採りました。

エンジニアのプライドに火を点けた一言

大変だったことは

先ほどの戦略の1つ目と2つ目に関係することですが、入出力インタフェース仕様の最適化が大変でした。インタフェースにはアナログ、デジタル含めて多様な方式があり、どれとどれを搭載すべきかという判断です。

技術面で苦労した点

ラピスセミコンダクタにベースの技術はあったものの、950MHz帯は新規の帯域でした。実際のところ、950MHz帯の無線特性が非常に厳しく多くの課題があることがわかり、この新規市場にチャレンジするか否かも含め閉塞感が漂いました。
しかし技術的課題を吟味する「スペシャリスト」という職位のベテランエンジニアから、「できない理由はない」との熱いメッセージを受けて、私達もエンジニアとしてのプライドにかけて課題に取り組みました。乱暴な話に聞こえるかも知れませんが、開発現場では大先輩の叱咤激励が士気を鼓舞することが少なくありません。

標準規格が開発途中で変更

もう1つ苦労した点として、該当周波数帯と無線の標準規格が開発途中で変更になったことが挙げられます。 当初は950MHz帯、ARIB-T96だったのですが、国の方針により920MHz帯になり、規格もARIB-T108に変更となりました。元々新規規格だった上に、このような規格変更があり、お客様においても規格の解釈や対応に関して混乱が生じ多くの問い合わせがありました。私たちもさまざまな検討を行い、ひとつずつ手探りで開発を行っていきました。

国内ほとんどの電力会社に採用

現在の状況

現在、国内のほとんどの電力会社に採用いただいています。電力スマートメータはAルートと呼ばれる電力会社毎に異なるネットワーク仕様の通信方式(電気メータ同志が通信してデータを運ぶ)とBルートと呼ばれる共通仕様(電気メータが宅内のHEMS機器と通信してインターネット経由でデータを運ぶ)の両方をサポートしています。
BルートはWi-SUNという日本発の通信技術が採用されており、このWi-SUNのCTBU(Certified Test Bet Unit)と呼ばれる標準試験機にラピスセミコンダクタの無線LSIが採用されるなどWi-SUN策定にも大きく貢献しています。

※BEMS:Building Energy Management System(ビル エネルギー マネジメント システム)

大変なプロジェクトを成功できた理由は

「とにかく諦めない」ということだと考えています。LSIの特性が思うように達していないということも多々ありましたが、お客様にはきちんと説明してリカバリ案を提案するなど、頻繁にお客様とコミュニケーションを取り続けたことで深い相互理解と信頼が生まれました。

振り返ってみて

確かに長く苦しい道のりでした。新規技術の開発、お客様への対応も、これまでの経験でトップクラスの大変さでした。しかしながら、プロジェクトチームとお客様の間に一体感が生まれ、業界標準と言われるまでの良いものができたことは非常にうれしく思っています。また、技術力はもちろん、メンタル面も飛躍的に向上し、非常に強いチームとなったことも、この経験のおかげだと思っています。