CEATEC JAPAN 2016イベントレポート

CEATEC JAPAN 2016イベントレポート

新戦略「ソリューション事業の促進とIoTへの注力」がIoTソリューションの具体化を推進し商品化へ

ラピスセミコンダクタは、CEATEC JAPAN 2016において、昨年度からの事業戦略である「ソリューション事業とIoT」を推進した成果といえる、IoTに向けたより現実性の高いアプリケーションとソリューションを中心にした展示を実施した。

ロームグループの一員としてロームブースにて展示を行ったラピスセミコンダクタであるが、今回からCEATEC JAPANがCPS/IoTをメインテーマにしたことから、IoTに注力しているラピスセミコンダクタにとっては格好の状況設定ともなり、多くの来場者がブースを訪れ、デモンストレーションはもちろん、展示物についても絶えず説明を求められる盛況ぶりであった。CEATECが刷新したエリアの「CPS/IoTを支えるテクノロジ・ソフトウェアエリア」において、「CREATING YOUR IoT WITH OUR SEMICONDUCTORS」をテーマに構成されたロームブースの中で、ラピスセミコンダクタが主体となるものとして以下が展示された。

土壌環境センサ
土壌環境センサ
「土壌環境センサ」は、昨年10月のプレスリリースで発表され、CEATEC 2015で展示されたものが、今回は実用化…
SynapSensor
SynapSensor®
(シナプセンサ)
「SynapSensor®(シナプセンサ)は、電通国際情報サービス(ISID)、ローム、ラピスセミコンダクタの3社による…
Lazuriteシリーズ
ORIZURU
Arduino互換を発端とするラピスセミコンダクタのマイコンボード「Lazurite」シリーズは、さらなる小型化と…
さらにらくら~くモジュール
Bluetooth® low energy
LSI/モジュール
「ML7125」は、Bluetooth® v4.1対応の低消費電力通信用LSIで、「MK71251 - 01」(マスタースレ…
MCU搭載特定小電力無線システムLSI
MCU搭載
特定小電力無線システムLSI
ML7416」は、Wi-SUN用通信LSIの業界標準であるML7396Bに、Wi-SUNプロトコルスタック実装に最…

土壌環境センサ:地中情報のリアルタイムデジタル化を実現
CEATEC AWARD 2016 グリーンイノベーション部門グランプリ受賞

CEATEC AWARD 2016 グリーンイノベーション部門グランプリ受賞

「土壌環境センサ」は、昨年10月のプレスリリースで発表され、CEATEC 2015で展示されたものが、今回は実用化に向けより具体化されたセンサモジュールと、実際にセンスしたデータを無線送信し、端末に表示するデモンストレーションが行われた。

土壌環境センサのご紹介 (CEATEC JAPANより)

センサモジュールは、先端を地中に差し入れる形状で、先端には酸性度(pH値)、水分量(センサとしてはEC:電気伝導度)、温度の土壌環境を測定できる世界初のセンサチップが搭載されている。上部には業界トップクラスの超低消費電力を誇る16ビットマイコンを中心にADCおよびDACで構成されるセンサ制御回路ボードと、無線通信モジュールとして、最新の920MHz帯超小型特定小電力無線対応のマイコンボードLazurite 920Jを内蔵している。また、電源は天辺に設置された太陽電池と内蔵の二次電池で構成されている。今回出展のセンサモジュールは商品化を前提にしたもので、このモジュール化には各構成部品最適化に加え、小型化と低消費電力化が鍵となった。

センサと、制御回路(マイコン)および無線通信モジュールの主要構成部品は、すべてラピスセミコンダクタ製であり、まさに、ラピスセミコンダクタが掲げている「無線、MCU、センサの融合」、自社の強みを生かしたIoTソリューションとなっている。

この土壌環境センサは、土壌環境調査に革新をもたらし、取得したデータによってスマートアグリやIT農業と呼ばれている分野や社会インフラモニタに大きく貢献できるソリューションとして期待されている。

土壌環境センサ

現状の土壌環境調査は、土壌を実際に採取し評価施設に持ち帰り分析する必要があることから、数メートルの場所の違いで大きく変化する土壌環境のリアルタイム測定や、広範囲の土壌データを同時に取得することは困難であるという。これに対して、この土壌センサを用いたセンサネットワークを構築することで、計測した土壌環境データを無線通信によってリアルタイムでモニタが可能だ。また、無線通信のセンサは土壌に差し込むまたは埋め込むだけで簡単に設置でき、ネットワーク接続によりクラウドを利用するなど、モニタリングシステムを大幅に簡素化できる点は、システムの普及に非常に重要なポイントになる。このようなIoT化により、今まで取得することができなかったデータを利用することで、例えば農産物の生産性の向上や防災対策などに大きな変化をもたらすことが可能であろう。

この土壌環境センサは、現在、大学や研究機関等の協力を得て、商品化に向けた実証実験が進行している。また、センサモジュールも信頼性試験などを行っている最中であり、量産化への準備が着実に進んでいる。

なお、この土壌環境センサは、CEATEC AWARD 2016 グリーンイノベーション部門グランプリを受賞しており、周囲の関心の高さが伺える出展であった。

SynapSensor® : 作業車の屋内位置や稼働状況を可視化
商品化に向けてプロトタイプを出展

「SynapSensor® (シナプセンサ)」は、電通国際情報サービス(ISID)、ローム、ラピスセミコンダクタの3社による共同開発中のIoTインフラで、様々な機器をクラウドにつなぐことを目的とする。

SynapSensorの仕組み

SynapSensor®は、機器に装備されたセンサからのデータ収集にBluetooth® low energyのビーコンを利用し、受信データを集約するネットワークの構築に920MHz帯無線通信を利用することで、無線LANなどよりはるかに安定した通信の下で、消費電力の少ないセンサネットワークの構築を可能にする。ウェアラブル機器やタグ、工場設備や製品などのIoTの普及を加速する新たなインフラとしての活用が見込まれている。

CEATECにおいては、2014年にBluetooth Watchを利用しブース内の説明員の位置を可視化するデモンストレーションを行い、2015年には屋内測位技術である歩行者自律航法(PDR)の実用性を向上するために、通信消費電力の低減と絶対位置の補正を実現するセンサネットワークを構築し、説明員の絶対位置を提示するデモを行っている。

SynapSensor CEATEC 2016 デモの概要

今回は、建設中のビル内などで稼働する作業車両の位置や稼働状況などを可視化するシステムのプロトタイプを開発し、作業車両の模型を使ったデモを実施した。このシステムは、GPSが利用できない屋内において多数の作業車両の位置情報をリアルタイムで取得する。また、温湿度、受けた衝撃回数、現在誰が運転しているかなどの稼働状況を示す様々なセンサデータも同時に収集することを可能にした。これらのデータにより、現場作業やメンテナンスの効率化、車両の最適配置などへの利用が期待される。

3社は、これまでに様々な領域で実証実験を重ねた結果として、2016年度中にSynapSensor®の商品化を計画している。ラピスセミコンダクタとロームは、Bluetooth® low energyおよび920MHz帯無線の通信モジュールによるSynapSensor®(ハードウェア)の商品化、ISIDはSynapSensor®を活用した各種サービスアプリケーションの開発に取り組んでいる。

Lazurite Mini:Lazuriteシリーズはさらなる小型化と低消費電力化を推進
ORIZURUはセンサ技術を生かし姿勢制御に挑戦

80%以上小型化した Lazurite Mini

Arduino互換を発端とするラピスセミコンダクタのマイコンボード「Lazurite」シリーズは、さらなる小型化と低消費電力を達成した新シリーズ「Lazurite Mini」を展示し、Lazuriteのコンセプトである「誰でも簡単にIoTのプロトタイプが実現できるリファレンスデザイン」を強くアピールした。

Lazurite Miniシリーズは、昨年販売を開始した「Lazurite Sub-GHz」と同様にラピスセミコンダクタの16bitローパワーマイコンと920MHz帯域無線通信LSIをベースに、SDカードサイズ(24mm×32mm)にまで小型化し、Arduinoの課題とされている消費電力も大幅に低減した。

このシリーズは、マイコンボード「Lazurite 920J」、その開発用ライタ「Lazurite Mini writer Type B」、Arduino接続用シールド基板「Lazurite 920J Xbee Shield」の3点で構成されている。Lazurite 920Jは、ハードウェアとソフトウェアの最適化を行うことで待機電流をArduinoに対して99.98%削減し、約7µAを達成した。これは、単三電池3本で10年以上動作する計算になり、バッテリー駆動のIoT機器の可能性を広げる。これらは10月初旬からネット商社を通じて1個単位で順次販売開始されている。

ORIZURU アクロバット飛行集

昨年に続き飛行デモンストレーションを行った飛行体「ORIZURU」には、さらに軽量化を行った「Lazurite Fly」(開発中)が組み込まれている。そのORIZURUだが、今年は加速度、ジャイロセンサの情報をマイコンがリアルタイムで機体にフィードバックすることで、安定した姿勢制御、そしてジェスチャーコントロールを実現した。飛行のデモに関しては動画が提供されているので、会場でデモを見た方もあらためてORIZURUの進化を確認いただきたい。ORIZURUは、ラピスセミコンダクタおよびロームの以下の商品で構成されている。

Lazurite Sub-GHz
Lazurite Sub-GHz
Lazurite Fly
Lazurite Fly
6軸コンボセンサ
6軸コンボセンサ
3軸加速度センサ + 3軸ジャイロセンサ (KXG03)
気圧センサ
気圧センサ (BM1383)
ML7396
スマートメータ向け規格対応
無線通信LSI (ML7396)
ML620Q504
ハイパフォーマンス&超ローパワー
16bitマイコン (ML620Q504)

またブースでは、Lazuriteやセンサ評価キットを活用したアイデアコンテスト「ROHM OPEN HACK CHALLENGE」が実施された。Lazuriteのコンセプト「誰でも簡単にIoTのプロトタイプが実現できる」によって具現化された作品が展示され、来場者の目を引いていた。

IoTソリューションを支えるコアデバイスにも新商品

IoTソリューションを中心にした出展においても、ソリューションを支えるコアとなる各種LSIやモジュールの新商品の展示にも怠りがない。

ML7125/MK71251 : Bluetooth® v4.1対応LSI/モジュール

SynapSensorの仕組み

「ML7125」は、Bluetooth® v4.1対応の低消費電力通信用LSIで、「MK71251-01」(マスタースレーブ切り替え)および「MK71251-02」(スレーブ専用)は、ML7125ベースのBluetooth® v4.1対応通信モジュールである。誰にでもすぐに使える「らくら~くモジュール」の第2弾で、第1弾のBluetooth® v4.0対応モジュールMK71050-03に対し、v4.1への対応とさらなる小型化、低消費電力化を図った。面積は40%、平均消費電流は60%の削減を達成しており、ウェアラブル機器、ビーコン、ヘルスケア/フィットネスといった、小型で電池駆動の携帯型IoTアプリケーションのキーデバイスである。

ML7416N : Wi-SUN準拠、MCU搭載特定小電力無線システムLSI

SynapSensorの仕組み

「ML7416」は、Wi-SUN用通信LSIの業界標準であるML7396Bに、Wi-SUNプロトコルスタック実装に最適な高性能MCU、ARM Coretex-M0+を搭載したシステムLSIである。市場ニーズによりWi-SUNデバイス構築には必須となるMCUをワンチップ化したことで、スマートメータのBルートをはじめ、HEMS/BEMS、そしてHANアプリケーションでの利用が見込まれる。先般発表されたロームの業界最小クラスの新Wi-SUN通信用モジュール「BP35C0」、同USBドングルの「BP35C2」にはML7416が搭載されており、モジュールの小型化および周辺回路の削減に貢献している。

終わりに

今回の出展は、ここ数年のIoTアプリケーションやソリューションに関するコンセプトやアイデアから一歩前進し、商品化や事業化を前提にした具体的な機器やシステムが展示された。これは、当初「IoTに利用できる」というところからスタートしたハードウェアやシステム案が、様々な検証や実験を重ねて現実のものになりつつあることを示している。

ラピスセミコンダクタの側から見ると、2015年度からの戦略「ソリューション事業の促進とIoTへの注力」が確実に機能しており、IoT市場の進捗と連動、さらには進捗を促進する形で進んでいることが伺えた。

なお、同様の展示を、2016年11月16日(水)~18日(金)に開催される「Embedded Technology 2016/組込み総合技術展」にても実施される予定である。この機会に是非ともローム/ラピスセミコンダクタのブースを訪問して、本レポートを参考に展示をご覧いただければと思う。

ET2016 出展のお知らせ

取材:高橋 和渡/fプロジェクト・コンサルティング