ラピスReports 2015 前編
「ソリューション事業の促進とIoTへの注力」2015年度新戦略のもとに、無線、MCU、新規事業に関する展示を展開 前編
「ソリューション事業の促進とIoTへの注力」
2015年度新戦略のもとに、無線、MCU、新規事業に関する展示を展開
ラピスセミコンダクタは、2015年度の新戦略として「ソリューション事業の促進とIoTへの注力」を掲げている。これは、2013年度からの事業拡大戦略をより強固にするために、改めて「ラピスの強みを生かしたソリューション」を突き詰め、導き出されたものである。ラピスの強みは、低消費電力化技術、高周波回路技術、デジ・アナ混載技術、メモリ設計技術の4つのコア技術を有し、特長ある商品を開発していることである。これらを基軸にしたソリューションとは「無線、MCU、センサの融合」であり、自ずと「IoT」が必要とする三要素、「情報収集」、「情報処理」、「情報交換」に結び付く。
CEATEC JAPAN 2015に向けては、無線、MCU、センサの融合を図ったソリューション商品を中心に、新規事業開拓プロジェクトを発端とした新しいIoTアプリケーションも提示した。
取材:高橋 和渡 / fプロジェクト・コンサルティング
Sub-GHz / Wi-SUNはIoTの基点となり、
Bluetooth® SMARTは多様なデバイスをIoTにする
Bluetooth® SMARTは多様なデバイスをIoTにする
無線関連では、M2M / IoT市場向けのワイヤレスセンサネットワークをターゲットにしたLSIおよびソリューションが展示された。この分野では、多様な新しいアプリケーションが生まれているが、ラピスはその中でも2つの分野に注目している。
1つ目は、スマートメータを基点とするスマートグリッド、HEMSおよびHAN、そしてMAN (Metropolitan Area Network) の中でも今後広がると言われている構造物ヘルスモニタ、第一次産業IT、自然災害監視などの分野である。これらには、Sub-GHzデバイスが対応し、Wi-SUN準拠によりIoTの基点となる。
2つ目はウェアラブル機器で、生体情報や行動データによる様々な応用が期待されている分野である。ウェアラブル機器はBluetooth® SMARTによってIoTになることが可能である。
ラピスは、お客様が必要とする通信を簡単に機器に実装できることを目指したソリューション商品に注力しており、通信LSIからシステムLSI、そしてモジュール化を推進しており、評価ツールやソフトウェアも積極的に提供している。
世界初Wi-SUN準拠のMCU搭載特定小電力無線システムLSI【ML7416N】
ML7416Nは、豊富な採用実績からWi-SUN用通信LSIの業界標準とも呼ばれるML7396Bに、Wi-SUNプロトコルスタック実装に最適な高性能MCU、Arm® Coretex®-M0+を搭載したシステムLSIである。Wi-SUNデバイス構築には必須となるMCUを、通信LSIとワンチップ化してほしいという市場要求に対応したソリューション商品である。
スマートメータのBルートをはじめ、HEMS/BEMS、そしてHANアプリケーションでの利用が見込まれる。また、次世代ゲートウェイやワイヤレスセンサネットワークなどアプリケーションに合わせたバリエーションを開発中である。
低消費電力v4.1対応 Bluetooth® SMART LSI【ML7125】 / モジュール【MK71251】
ML7125は、Bluetooth® v4.1対応の低消費電力Bluetooth® SMART通信用LSIで、MK71251はML7125ベースのBluetooth® SMART通信モジュールである。既存品に対し平均動作時消費電流を70%削減した。これによって、小型であることが重要なデバイスは搭載する電池を小さくでき、さらなる小型化が可能になる。v4.1に対応し、BANのゲートウェイとして使用可能である。
また、このモジュールは、十分な無線設計のリソースがなくてもデバイスにBluetooth®を実装できるソリューション商品として開発された。ウェアラブル機器、Beacon機器、ヘルスケア/フィットネスといったアプリケーションに最適で、セット開発のための評価用スマホツールやプロファイルをダウンロード提供している。
超低消費電力マイコンとタフマイコンを主軸に16ビットでは新規市場を開拓。
IoTは無線との融合を促進
IoTは無線との融合を促進
ラピスのMCU(マイクロコントローラ)は、業界トップクラスの超低消費電力を誇ることで知られている。8ビット品に加え16ビット品の市場投入が順調で、8ビット品と同じ消費電流で4倍の処理能力を提供する「超低消費電力マイコン」と、ノイズや高温環境に強い「ローパワータフマイコン」を主軸に、これらの特長を必要とする家電や小型産業機器の市場開拓が進んでいる。
ソリューション商品としては、センサ制御MCUの開発が進んでいる。Arm® Cortex®-M0を搭載した32ビット品は、センシングや演算を行い結果だけをホストプロセッサに送ることで、ホストプロセッサの負荷を大幅に低減し、システム全体の低消費電力化を可能にする。8ビット品は低消費電力が重要となるウェアラブル機器やセンサネットワーク、アクセサリ系のアプリケーションに適している。
IoTに関しては、Arduino互換のIoTプラットフォームとして開発されたマイコンボード「Lazurite Sub-GHz」に、超低消費電力ML620500シリーズのMCUを搭載し、業界最小*の待機時消費電力を実現した。 *2015年7月ラピスセミコンダクタ調べ
電池駆動に最適な超低消費電力16ビットマイコン【ML620500シリーズ】
ML620500シリーズは、小電力化と高性能化の両方を満たすことを目的に開発された16ビットMCU。 電池駆動機器から産業機器など広範なアプリケーションでのMCUに対する省力化要求と、ディスプレイのカラー化や無線モジュールや複数のセンサモジュールを制御するなど、8ビットでは困難な高性能化要求に対応する。センサノード、BLE無線モジュールの他、電子棚札など電池駆動の小型産業機器をはじめ、シリーズ機種展開によって適応アプリケーションを拡大中である。
また、従来の8ビットMCUで開発したソフトウェア資産を活用でき、ソフトウェア開発環境キットもそのまま使うことができる。
ノイズや高温に強い低消費電力16ビット ローパワータフマイコン【ML620130ファミリ】
ML620130ファミリは低消費電力でありながら、ノイズ耐性が高く、高温環境での動作を可能にした16ビットMCU。現状の小型産業機器や家電でのMCUはまだ8ビットが主流であるが、近年、より高度な制御や処理能力の要求が増えていることから開発された。家電は発熱体やモータを搭載しているので思いのほか動作環境は厳しく、MCUにもタフさが求められる。ML620130ファミリは105°C対応で、ノイズ耐量試験ではIEC61000-4-2より厳しいラピスの独自条件において±30kVをクリアする。
また、内蔵のクロック精度は±1.0%(-20°C ~ +85°C)を達成しているのでUARTに対応でき、外付けの水晶発振器は不要である。